列車の中に何をかを忘れ物してしまったことがありますでしょうか。
わたしはあります。今でも思い出すとちょっと自分の不甲斐なさを感じてしまいます。
ドイツ発の国際列車に乗っていたのです。オーストリアを経由していわゆる旧東ヨーロッパのある国の終点までへと予定通り走り続けていたに違いない。国際列車でしたが、ドイツ国内だけでの移動、しばらくしたら途中下車するつもりでしたから。それは確かOsnabrückという駅 だったかと思います。
乗車後、車内、自由席を窓際に目敏く見つけて直ぐに腰かけた。安心して、上着を脱いで軽快気分になり、それを窓際のフックにふっ掛けた。目的の駅まではまだ十分時間があると余裕綽綽。列車が途中でゆっくりと停止する、そして暫くするとまたゆっくりと発車する、そんな繰り返しを腰かけたまま全身で何度か、二度、三度感じていた。ここは何という駅だろう、と窓外を見たら、あれっまっ! 目的地の駅じゃないか! と急に発見。そこで慌てた。泡を食った。非常に慌てながら急遽、単身、身軽に下車した。プラットフォームに降りたのは私だけか!?
プラットフォームに無事降りられて安心したと思いきや急に我に返った。
しまった! 上着を窓際に掛けたまま忘れて降りて来てしまったのだ。
どうしよう、どうしようか? どうする? どうするのか?
列車はもう先へと行ってしまった。追いかけようとしても追いつけない。どうしよう? どうしたら良いのか。
とても泡を食ってしまっていた。動転している自分を感じていた。そこに一人唖然と突っ立って不安は隠せない、が周りには誰もいない。
しばらくしたら、これは幸いとプラットフォームに駅員さんを発見した。駆け寄って助けを求めた。事情説明を試みた。興奮しながらも我が
拙いドイツ語で全身全霊を動員して意思疎通を心試みていた。
通じたのか、通じてないのか、私が求めることが了解出来たのだろうか。
駅員さんはどうしようもないといった消極的な反応振りしか見せない。
あの列車の中にジャケットを置き忘れてきてしまったのですよ!!
どうしたら良いのですか!?
どうしようもないということは我ながら薄々もう分かって来てしまっていた。
諦められない、でも諦めるしかないのだ。当該の座席にやってきた誰かは持ち主なしのジャッケトを発見して、多分、ホックから外しそのま
ま持って行ってしまうことだろう。
駅の外、上着なし、ワイシャツ姿で意気消沈、市内中心へととぼとぼと重い足取りで歩いて行った。
残念、悔しい。どうしたら取り戻せるのだろうか、列車は終点駅までへと今も進行中、戻って来ることはあり得ない、それは日よ見るよりも明らか。何の手の施しようがないと自分を納得させるしかなかった。無い無い尽くしであった。
実はジャケットの内ポケットの中には結婚を予定している彼女の笑顔カラー写真一枚が大事そうに収まっているのだ。それがジャケットと一緒に目の前から消えてしまった。まるで彼女を失ってしまったかのような気分、自分の所為で写真を紛失してしまったとは口が滑っても言えないと思い続けていた。
Kuriose Fundstücke
奇妙な紛失物
Rollator, Trompeten und Hörgerät im Zug vergessen
シルバーカー、トランペット、補聴器とかを列車内に忘れたのか(それとも、置いて行ったのか)
https://www.krone.at/3205032
Kurios, was Bahnpassagiere in Oberösterreich so alles in den Waggons liegen lassen:
Bei den ÖBB wurden im heurigen Jahr etwa Schuhe, Instrumente oder ein Hörgerät abgegeben.
Die Fundgegenstände werden immer mehr, finden aber oft den Weg zurück zu ihren Besitzern.
奇妙なことだが、オーバーオーストリア州内での列車乗客が列車の中に置いてきたモノとして、オーストリア鉄道当局には今年(2023年)、靴、楽器または補聴器が届けられた。落とし物は増えるばっかり、でもしばしば所有者へと戻される。
読者の皆様、既に新年2024年を迎えていますが、昨年の総決算がオーストリア・オーバーオーストリア州の列車内から届いています。遅れ馳せながら、同新聞記事を引用してご報告申し上げる次第です。今年は忘れないように気を付けませう。
「所有者へと戻される」ということですが、所有者が適切な行動を起こした結果でしょうね。鉄道会社が率先してコンタクトを取るということはあり得るのでしょうか。持ち物(つまり列車内の忘れ物)に名前やら住所、電話番号等が記載されていれば、確かにあり得るかもしれませんね。私の冒頭例の場合、所有者の情報を得ることは出来なかったことでしょう。誰でも合うならば簡単に着込めるジャケットになっていましたから。彼女の写真を発見してつらつらと見ても誰だか分からなかったことでしょう。有名な女優でも何でもなかったし。知っているのは殆ど私だけだった筈。
Wie heißt es so schön: Es gibt nichts, was es nicht gibt.
Das trifft ganz besonders auf die insgesamt 2946 Fundgegenstände zu,
die im heurigen Jahr in Zügen in Oberösterreich vergessen wurden.
Darunter sind Dinge, bei denen man sich durchaus fragen kann,
wie sie liegen bleiben konnten. Etwa sechs Stück Schuhe oder ein Rollator.
世間で言い慣わせているように、「(文字通り訳は)無いものは何もない。」この言い草は今年(2023年)、オーバーオーストリア州の列車の中に忘れられたモノ、それら全部を勘定すると2946件の落とし物があったが、これらのモノモノについて特に当て嵌まる。その忘れ物の中には一体どうしてそれらが忘れたモノとしてあり得るのか、と疑問を投げかけられるモノがある。例えば、靴6足とかシルバーカー一台とか。
Es gibt nichts, was es nicht gibt. この言い回し、ちょっと曲者ですね。意味深長とでも言えましょうか? 例えば具体的にはどういうことを意味しているのでしょうか。インターネット上に英語での説明・訳文がありましたが、There is nothing new under the sun. これは聖書に見いだされる文句ですよね。太陽の下には何ら目新しいものはない。つまりいつでも同じことが起こる?(同じ)忘れものはいつの時代にあっても起こる?
日本(語)では”シルバーカー”と呼ばれているのですか!? ドイツ語単語を見ながら、実際、路上で老婦人たちが両手で運転するかのようにゆっくりと全身で注意深く押している姿をちょくちょく目撃しますが、その両手で、または両腕で押しながらとぼとぼと一緒に進んでいく、いわば”歩行随伴器”、日本語で考えたことはありませんでしたから、訳するのにとっても困りました。定訳があるのだろうか。日本にもそんな”歩行同伴器”は存在するのだろうか、と不思議がってしまいました。日本にいたときはそんな器具を使って歩いている人を見つけたことが殆どありませんでしたから、実に時に適切な訳語を見つけるのもむずかしい。
カーと聞くと自動車を想像してしまいます。シルバーはお年寄りを指しているのでしょう。シルバーカーとはお年寄り用の自動車かな、と。小型自動車かな、と。
Gepäckstücke werden am öftesten vergessen
旅行カバン類は最もしばしば忘れられるモノ
öftesten==most often
Am häufigsten wurden in den Bahnen der ÖBB heuer Gepäckstücke
wie Koffer, Rucksäcke und Taschen vergessen (insgesamt 799).
Auch Handys (426) blieben oft liegen, genauso wie Geldbörsen (393).
Aber eben auch kuriose Fundstücke waren dabei (siehe unsere Grafik unten):
24-mal wurde beim Aussteigen darauf vergessen, die eigene Brille mitzunehmen,
sogar eine Röntgenaufnahme blieb in einem Zug liegen.
Auch Musiker sind bisweilen zerstreut: Drei vergaßen ihre Trompete, einer seine Geige.
bisweilen==manchmal
zerstreut → abwesend und ganz unkonzentriert
最もしばしば忘れられたモノ、オーストリア鉄道(ÖBB)列車内ではスーツケース、リュックサックそしてバッグといった旅行カバン類が今年忘れられた(全部で799件)。携帯電話(426件)や財布(393件)もしばしば忘れられる。奇妙な落とし物もあった(下の図表を見よーー訳者中注、ここでは割愛)。下車の際、ご自分のメガネのお持ち帰りを忘れていた件数が24回、レントゲン写真さえも列車内に残っていた。ミュージシャンだって時に上の空、三名はトランペット、一名はヴァイオリンを忘れた。
財布(393件)、つまり現金やらクレジットカード等の忘れ物のことでしょう。持ち主に戻ってくる可能性は何パーセントでしょうかね。この数字は届けられた件数を指していると理解して良いのでしょうね。届けられなかった、つまり件数に入らないままの財布だって多分あった筈と想定してしまうのですが、如何でしょうか。
ところで、ちょっと軽い、でもちょっとだけ難しい?(ドイツ語文法?)質問一つ。
ヴァイオリンを忘れた人は男性だったでしょうか、女性だったでしょうか。
断定は出来ない? 回答できない?
わが日本語訳を読む限りは全然分からないでしょう、ね。でも、どちらかに違いない。
鉄道会社に問い合わせてみますか。所有者は取り戻しに来たのでしょうか。女性でしたか、男性でしたか? 所有者はまだ現れていない?
Das große Glück in allen Fällen: Wer etwas im Zug vergisst, hat gute Chancen,
sein Hab und Gut wiederzubekommen. Die Eigentümer können ihren Verlust online
oder telefonisch bei den ÖBB melden. „Abgegebene Fundgegenstände bleiben
zwei Wochen lang bei uns“, heißt es von den Bundesbahnen zur „Krone“.
in allen Fällen== in all cases
Hab und Gut==possesions, belongings
全てのケースでの大いなる幸運:列車の中に何かを忘れる人、その人は自分の所有物を再び得るチャンスは良い。
所有者は紛失物についてオンラインまたは電話でオーストリア鉄道会社(ÖBB)に連絡出来る。「手渡された紛失物は2週間私共で保管されます」と同鉄道会社が弊紙Kroneに伝えている。
Immer mehr Dinge bleiben liegen
置き忘れ物は増える一方
Ein Drittel der Gegenstände werde in Oberösterreich innerhalb dieser 14 Tage abgeholt.
Der Rest, meist kleinere Dinge wie Mappen oder Hauben, wird danach an
das öffentliche Fundbüro übergeben. Voraussetzung ist allerdings immer,
dass ehrliche Finder die Wertgegenstände bei den Schaffnern oder direkt
in der Lost & Found-Stelle am Linzer Hauptbahnhof abgeben.
忘れ物の3分の一はオーバーオーストリア州にあってはこの14日以内に回収されている、と。その他、主に小さなモノ、フォルダーとか帽子等はその後では公共の紛失物事務所へと(移管ともしがたいから?訳者コメント)移管される。その際、常に条件付きなのだが、正直な発見者が貴重品を車掌に渡すか直接リンツ駅の紛失物取扱所に提出しているならばである。
Dort hat man immer mehr Arbeit, denn in ganz Österreich steigt
die Zahl der Fundgegenstände (auch, weil es immer mehr Fahrgäste gibt).
Wurden 2021 bundesweit noch 19.000 Dinge in Zügen vergessen,
waren es 2022 schon 27.000, und nun, im heurigen Jahr, 31.700 Gegenstände.
そこでは仕事が増えている、というのもオーストリア全国では紛失物数が増大しているからだ(それに、乗客が常に増え続けているからでもあるのだが)。2021年オーストリア全国でまだ19000物件が忘れられたが、2022年には27000物件、そして今年2023年は31700物件となっている。
ここ二、三年間の統計ですが、今年2024年は更に増え続けると予想されるような勢いですね。まあ、列車内にて発見したモノに対しては正直な人もいれば不正直な人もいる。幸運にも紛失物を回収できた当人は鉄道会社に対して手数料等を支払うのでしょうか、ちょっとだけ疑問が私の内に沸いてきました。
Grammatik aktiv - Deutsch als Fremdsprache - 1. Ausgabe - B2/C1: Verstehen, Üben, Sprechen - Übungsgrammatik - Mit PagePlayer-App inkl. Audios
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